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IT業界における下請法の役割【1/1】

2014年1月16日 14:21IT業界の裁判判例集

IT業界における下請法の役割

下請事業者を親事業者の横暴から守るため制定されたいわゆる下請法(「下請代金支払遅延等防止法」)は、昭和31年の施行以来、長らく物品の製造・修理に関する取引のみに適用されてきたが、平成15年の法改正によって、同法の適用範囲はIT関連の取引にも拡大されることとなった。

そこで、今回は、同法がどのような場合にIT関連の取引に適用されるのか、同法が適用されるとどのような効果が生ずるのかを検討してみたい。


 

1 下請法の適用要件

① 法定の取引類型のいずれかに該当すること

下請法2条1項ないし4項は、同法の適用を受ける取引類型を列挙しているが、IT関連の取引においては、3項の「情報成果物作成委託」又は4項の「役務提供委託」に該当するかどうかが問題となる。

  • ●「情報成果物作成委託」
  • ここでいう「情報成果物」とは、簡単にいえばコンピュータ・プログラムのことであり、その作成を他の事業者に委託する取引が「情報成果物作成委託」に当たる。

  • ●「役務提供委託」
  • 「役務」とはサービスのことであり、例えば、客から請け負ったソフトウェアのサポート・サービスを他の事業者に委託する取引などが「役務提供委託」に当たる。

    ② 委託する側が「親事業者」に、委託される側が「下請事業者」に該当すること

    下請法における「親事業者」「下請事業者」に該当するか否かは、委託される業務の内容及び資本金の額によって判断される。

  • ●プログラムの作成や情報処理システムの運用などを委託する場合
  • ・委託する側が資本金3億円を超える法人であり、委託される側が資本金3億円以下の法人・個人である場合、両者は「親事業者」「下請事業者」に該当する。

    ・委託する側が資本金1千万円を超え3億円以下の法人であり、委託される側が資本金1千万円以下の法人・個人である場合、両者は「親事業者」「下請事業者」に該当する。

  • ●コールセンター業務などの顧客サービス代行など、情報処理等以外のサービスを委託する場合
  • ・委託する側が資本金5千万円を超える法人であり、委託される側が資本金5千万円以下の法人・個人である場合、両者は「親事業者」「下請事業者」に該当する。

    ・委託する側が資本金1千万円を超え5千万円以下の法人であり、委託される側が資本金1千万円以下の法人・個人である場合、両者は「親事業者」「下請事業者」に該当する。

    2 下請法が適用される場合の規整

    ① 親事業者に義務づけられる行為

    下請事業者と合意の上、下請代金の支払期日を定めておかなければならない。これは、納品日から60日以内のできるだけ早い時期であることを要する(法2条の2)。システム開発の場合には、システムを受領した日が納品日となるのであり、検収の終了日が納品日となるわけではない。

    下請事業者に発注をするに当たっては、「下請代金支払遅延等防止法第三条の書面の記載事項等に関する規則」所定の事項を記載した書面を交付しなければならない(法3条)。

    所定の支払期日までに下請代金を支払わなかった場合、納品日から60日を経過した日から現実の支払日までの間、年率14.6%の利息の支払義務を負う(法4条の2)。

    下請取引が完了したときには、取引記録を作成して2年間保存しなければならない(法5条)。

    ② 親事業者に禁じられる行為

    下請事業者が納期を守らなかったり仕事に欠陥があるなどの事情がない限り、下請事業者の完成したプログラムの受取りを拒んだり、発注の取消しをしたりしてはならず(法4条1項1号)、下請事業者の責任によらない理由に基づいて返品をしてはならない(同項4号)。

    下請代金の支払いを遅延させてはならず(同項2号)、下請事業者の責任によらない理由に基づいて下請代金を減額してはならないし(同項3号)、相場に比べて著しく低い下請代金の額を設定することも許されない(同項5号)。

    品質改善など正当な理由がある場合を除き、自己の指定する物を強制的に購入させたり、サービスを強制的に利用させたりしてはならない(同項6号)。

    下請事業者が、親事業者の禁止行為を公正取引員会などに通報したことを理由として、取引の停止などの不利益な取扱いをしてはならない(同項7号)。

    親事業者は、下請事業者に材料等を自己から購入させた場合、下請事業者がその材料等を用いて行う仕事の報酬より先に、下請事業者にその材料等の代金を支払わせてはならない(法4条2項1号)。

    手形サイトが120日を超えるような割引困難な手形によって下請代金を支払ってはならない(同項2号)。

    金銭やサービスなどを提供させることにより、下請事業者の利益を不当に害してはならない(同項3号)。ただし、サービスなどを提供することが下請事業者にとっても利益であり、下請事業者が任意に行うような場合には、本号の禁止には抵触しない。

    下請事業者の責任によらない理由に基づいて、不当に仕事をやり直させたり、仕事の内容を変更したりしてはならない(同項4号)。

    ③ 取締りと制裁

    禁止行為を行った親事業者に対しては、公正取引委員会等が勧告を行う(法7条)。勧告に従う限りはいわゆる独禁法(「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」)上の課徴金は発生しないが(法8条)、勧告に従わない場合には、独禁法に基づく排除措置命令や課徴金納付命令が出されることがある。

    書面の交付義務(法3条1項)を怠ったり、取引記録の作成・保存(法5条)を怠るなどした場合や、法9条に規定された報告や立入検査を拒んだり妨害したりした場合には、50万円以下の罰金に処せられる(法10条・11条)。

    なお、下請法の「親事業者」に該当せず同法の規制が及ばない場合であっても、委託する側には独占禁止法2条9項5号・19条(優越的地位の濫用の禁止)の規制が及ぶので注意を要する。

    3 IT業界における下請法違反にはどのようなものがあるのか?

    平成24年度の情報サービス企業の下請法違反件数は94件(全体の4.2%)である 。

    その内訳としては、支払遅延が最も多く(84件)、次いで受領拒否(3件)となっている。

    その他(7件)としては、ソフトウェアの開発を下請事業者に委託しているXが、下請事業者との間で、下請代金を銀行口座に振り込む際の手数料を下請事業者が負担する旨合意していたが、自社が実際に支払った振込手数料を超える額を下請代金の額から減じていたという代金減額の事案があった。なお、勧告より強力な措置がとられた事例はなかった。

    このように、下請法違反が最も問われやすそうな場面は報酬の支払場面である。

    そこで、下請企業に委託をする側としては、元請契約の内容を十分に検討し、自社のキャッシュフローの見通しを立てた上で下請契約を締結するよう心掛ける必要がある。

    一般に、ユーザー企業と元請企業との契約は、高い利益が上乗せされる代わりに、最初に見積もった金額で契約に定められた内容の仕事を成し遂げなければならない「一括請負契約」であるから、元請企業には赤字のリスクが付きまとうこととなる。

    一方、そのようなリスクを負うことのできない下請企業は、元請企業と「時間契約」を結び、「人月単価」ベースで元請企業に料金を請求することが通常である。元請企業としては、このときに、下請法に抵触しない限りで、各下請企業の人月単価の額を見直したり、支払期日を適切に設定したりすることが重要である。

    支払遅延といえども下請法に違反することに変わりはなく、軽視することはできない。勧告や公表などが行われれば、企業の信用を損なう重大な事態になりかねないことからも、下請法については十分な注意を払っておくべきである。

    なお、公正取引委員会は、下請法について相談窓口を設けたり講習会を実施したりするなどの各種取組みを行っているので、不安があればこれらを利用してみるのも手であろう。

    参考:下請法の適用の場面のイメージ図

    下請法の適用の場面のイメージ図

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