どこからが類似?スマホゲームに学ぶ著作権【1/1】|スキルと市場価値UPに役立つ情報ポータルサイト「キャリア@PRO人(プロジン)」  

どこからが類似?スマホゲームに学ぶ著作権【1/1】

2014年1月16日 15:49IT業界の裁判判例集

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近年、多数のスマートフォン向けのゲームアプリが次々に開発され、市場で人気を博しており、その内容は実にさまざまである。もっとも、実際、似たようなゲームアプリが存在することも少なくない。そして、平成24年8月上旬には、このような事態を象徴する判決が出された。
本稿では、その裁判例を参考に、一体どのような場合に類似のゲームアプリの提供が著作権侵害となるのかを検討してみたい。


 

1 携帯電話機向け魚釣りゲーム差止訴訟の概要

これは、株式会社ディー・エヌ・エーら(以下、「被告ら」という)が製作し配信している携帯電話機向け魚釣りゲーム「釣りゲータウン2」(以下では「被告作品」という)が、グリー株式会社(以下「原告」という)が製作し配信している携帯電話機向け魚釣りゲーム「釣り★スタ」(以下、「原告作品」という)の著作権等を侵害しているとして、原告が被告らに対し、被告作品に係るゲームの影像の複製及び公衆送信の差止め、ウェブサイトからの上記影像の抹消及び記録媒体からの上記影像に係る記録の抹消、損害賠償金の支払等を求めた事件である。
第1審では、被告作品における「魚の引き寄せ画面」は、原告作品における「魚の引き寄せ画面」に係る原告の著作権等を侵害するものであることを認め、被告らに対し、被告作品の配信差止等を命じた。
しかし、控訴審では、被告作品の画面の変遷や素材の選択・配列の表現から、原告作品のそれの表現上の本質的な特徴を直接感得することはできないため、被告らの行為が原告作品の著作権等を侵害するとは認められないと判断され、原告は敗訴したのである。

2 著作権の侵害の基準はどのようなものがあるか?

本件で主に問題となったのは、原告の著作権に含まれる「翻案権」及び「同一性保持権」が侵害されているのではないかという点である。
翻案権とは、著作物を独占排他的に翻案する権利をいう。著作物の翻案とは、既存の著作物に依拠し、且つ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正・増減・変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう。そして、思想、感情若しくはアイデア、事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において既存の著作物と同一性を有するにすぎない著作物を創作する行為は、既存の著作物の翻案に当たらない(最判平成13年6月28日参照)。
つまり、①既存の著作物と新規の著作物の共通点が認定できるか、②共通点に表現上の創作性があるか、③新規の著作物に接する者が、既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得できるか否かによって、翻案権を侵害したかどうか判断されることになるのである。
同一性保持権とは、著作物及びその題号につき著作者の意に反して変更・切除その他の改変を禁止することができる権利をいう。既存の著作物の著作者の意に反して、表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に変更・切除その他の改変を加えて、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを創作することは、学校教育の目的上の必要性がある場合など著作権法20条2項に該当する場合を除き、同一性保持権の侵害に当たる(最高裁昭和55年3月28日判決参照)。

3 本件ではどのように判断されたのか

このように、本件で問題となった2つの権利侵害についての判断基準は判例によって既に確立されていたので、控訴審の知財高裁は、同基準に従って判断を下した。
知財高裁は、同様の複数の釣りゲームについても考慮したうえで、被告作品のうち著作権侵害とされる「魚の引き寄せ画面」等は、アイデアなど表現それ自体ではない部分又は表現上の創作性がない部分において原告作品と同一性を有するにすぎず、原告作品や被告作品における画面の変遷並びに素材の選択及び配列は、釣りゲームにおいて「ありふれた表現方法」にすぎないものであるという理由で、被告作品に接する者が原告作品の表現上の本質的な特徴を直接感得することはできないとして、翻案権の侵害も同一性保持権の侵害も認めなかった。
すなわち、釣りゲームにおいては、水中に糸を垂らしたり、引いたり、魚を釣り上げたりする「ありふれた表現方法」だけが共通しており、他のエフェクト等に異なる点があれば、著作権侵害には当たらないということである。釣りゲームという一定の動作が予定されているジャンルのゲームであるからこそ、このような結論になったと考えられる。他方、このような一定の動作が予定されていないジャンルのゲームにおいてはこのようにはいかないであろう。例えば、パズルゲームにおいて、ブロックが画面上部から降ってくるという演出は「ありふれた表現方法」といえそうであるが、下から出現する演出については、同一性が認定されれば著作権侵害となるおそれはあるであろう。

4 著作権侵害と判断されないためには、どのようなことに配慮すればよいか

以上述べたことからすると、著作権侵害を避けるためには、例えば、ゲームアプリを製作する場合には、他のゲームアプリの「ありふれた表現」でない独自の表現と共通した表現をしないようにする必要がある。そのためには、予め、市場に出ている同種のゲームアプリの内容について十分に調査しておく必要があるであろう。「ありふれた表現」かどうかを的確に判断するためには、なるべく多数のゲームアプリを調査対象とすることが望ましい。
事前の調査の必要性は、ゲームアプリだけでなく、他の著作物の創作についてももちろん当てはまる。どのような製品を開発するにせよ、同一の市場において類似品と思しきものがないか、十分検討する必要性があるであろう。
このような調査を経て、既存の著作物の特徴を彷彿とさせないような著作物の創作に努めれば、まず著作権侵害が問題となることはないのではないかと思われる。
また、仮に、著作権を侵害していると第三者から主張されたとしても、このような事前調査をしていれば、著作権侵害を理由とする損害賠償の要件である故意や注意義務違反を否定する有力な証拠となる。このように、事前調査をしっかりすることは、訴訟となった場合においても重要な意味をもってくるのである。

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