ハードディスクが差押え?捜査協力と情報保護【1/1】|スキルと市場価値UPに役立つ情報ポータルサイト「キャリア@PRO人(プロジン)」  

ハードディスクが差押え?捜査協力と情報保護【1/1】

2014年1月16日 15:58IT業界の裁判判例集

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警察庁の発表によると、平成25年上半期のサイバー犯罪の検挙件数は4093件で、ネットワーク利用犯罪はそのうち3057件にも上った。ネットワーク利用犯罪には、掲示板を使った名誉毀損や犯罪予告、ネットオークションを利用した詐欺などが含まれるが、これらの件数は平成24年に比して増加傾向にある。
インターネット上の掲示板サービスを提供したり、クラウドサービス等の通信事業を取り扱ったりするIT企業は、このような犯罪と無縁ではいられない。直接の被害者にならないとしても、関係者として巻き込まれてしまう可能性も十分にある。例えば、犯罪に当たるような書き込みの行われた掲示板のアクセスログの提供を求められるかもしれない。
この場合、捜査協力が市民の義務であると考えるならば、要請に応じて速やかにアクセスログを提供すべきであるとも思える。
しかし、これに安易に応じると、事件とは無関係の第三者の利用状況までも警察に提供してしまう可能性があり、個人情報を漏洩したものとして新たな紛争が生じかねない。
他方で、捜査に全く協力しないという姿勢を貫くと、企業の社会的責任が問われてしまう。
そこで、このような事態にどのように対応するのが賢明なのか、本稿で検討してみたい。


 

1 任意の提供は適切でない?

このような個人情報保護の問題について、総務省は「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン」というものを公開している 。
これによると、電気通信事業者は、通信履歴(利用者が電気通信を利用した日時、当該通信の相手方その他の利用者の通信に係る情報であって、通信内容以外のものをいう。)については、利用者の同意がある場合、裁判官の発付した令状に従う場合、正当防衛又は緊急避難に該当する場合など特別の場合を除き、他人に提供しないものとしている。
つまり、警察官など法律上の照会権限のある者から照会があったとしても、それは上記のような特別の場合には当たらないから、照会に応じて通信履歴を提供することは適切でないということになる。
このように、総務省の見解による限り、警察からの照会に対して回答すべきではない。

2 捜査令状には従おう

しかし、同ガイドラインは、「裁判官の発付する令状に従う場合」には通信履歴を提供することを推奨している(むしろ、令状がある場合には法律上強制的に提供させられる)。
平成23年の刑事訴訟法改正により、データの入った記録媒体(ハードディスクなど)についても差押えが可能となり、他のハードディスクにデータを移してからそのハードディスクを差し押さえることも可能となった。実際には、裁判官の発する令状があれば、必要なデータを記録媒体にコピーした上で、そのコピーの入った記録媒体を提供するなどの方法で企業が捜査に協力することが多い。そうしないと、業務に用いているハードディスクが押収されることとなり、業務に重大な支障が生じるからである。
もっとも、この場合には、令状をしっかり見せてもらい、差押えの対象となるデータの範囲をよくチェックする必要がある。冒頭にも書いたように、事件と関係のない第三者の個人情報まで提供してしまえば、その個人情報の持ち主との紛争が生じかねないからである。

3 警察から連絡が来たら?

まず、警察から任意の捜査協力の要請が来たときには、総務省のガイドラインに従って断るのが良いであろう。もっとも、非協力的な対応に終始すべきではなく、あくまで第三者の個人情報保護の観点から無断で情報を提供することはできないことを理由として、令状の発付があれば従う旨も明らかにしておくとよいであろう。
非協力的な対応をした上で捜査令状が発付された場合に、捜査機関等が証拠保全の必要性が高いと判断すれば、ハードディスクそのものが押収されてしまい、会社の業務に支障をきたすおそれもあるので、十分注意する必要がある。
また、令状がある場合でも漫然と協力すべきではなく、第三者の個人情報保護を図るために、捜査に必要とされている限りで情報を提供するようにしなければならない。
なお、言うまでもないが、警察から連絡がきた後、捜査に必要なデータをコピーする際には、そのデータを誤って削除したりしないように十分注意する必要がある。もし、警察から情報提供の要請を受けた後にデータを削除してしまった場合、証拠隠滅罪として刑事責任を問われることもある。

刑事事件の捜査に巻き込まれたとき、犯罪捜査は国民の安全を確保することにもつながるため、協力しなければ社会からの信頼を失いかねないし、他方で、漫然と従えば利用者からの信頼を失うことにもなる。非常に難しい問題だけに、もしもの時にどのような手続がとられるのかは、十分把握しておく必要があるであろう。


1. 平成23年総務省告示第465号

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