ゆるキャラから学ぶ著作物の管理【1/1】|スキルと市場価値UPに役立つ情報ポータルサイト「キャリア@PRO人(プロジン)」  

ゆるキャラから学ぶ著作物の管理【1/1】

2014年1月16日 16:13IT業界の裁判判例集

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平成25年11月24日、「ゆるキャラさみっとin羽生」にて、ゆるキャラグランプリ2013の結果が発表され、栃木県佐野市の「さのまる」が見事グランプリ(ご当地部門)を獲得した。同グランプリには総勢1580体のゆるキャラが参加し、うち335体が企業の管理するゆるキャラであった。このように、企業においても、企業情報のPRやコーポレートアイデンティティ のためにゆるキャラは多く用いられており、このご時世、そういったゆるキャラの人気に火がつくことも十分にあり得る。
しかし、ゆるキャラの人気が出たとき、問題になりがちなのが著作権である。ゆるキャラにも著作者は当然存在しており、ゆるキャラの著作者によっては著作権侵害を訴えてくることもある。また、ゆるキャラの著作者自身や第三者が当該ゆるキャラの類似物を創作して著作権を侵害するようなことも考えられる。
そこで、本稿では、ゆるキャラの著作権をめぐる紛争を回避するためにはどのようなことに注意すればよいのかを検討してみたい。


 

1 ゆるキャラはどうやって作られるのか?

ゆるキャラは一般的に公募によって創作されることが多い。現在もゆるキャラを公募している地方公共団体は多いのであるが、なぜ公募なのだろうか。理由は3つ考えられる。
1つ目は、公募することで多くの人の目に留まり、マスメディア等に取り上げてもらうことで宣伝効果が生まれることである。
2つ目は、多くの人から自由な創作を提供してもらうことができる点である。多数のデザインを募り競争させることは、より良いゆるキャラの誕生につながる。
そして3つ目は、経費が安くなることである。デザイナーに依頼すれば、通常、相応の報酬を支払わなければならない。例としては、平城遷都1300年祭のマスコットキャラクター「せんとくん」があげられる。この「せんとくん」、制作費用は総額で1018万円もかかっている。対して、現在行われているゆるキャラの公募では、多くの場合、デザインについては賞金10万程度が相場のようである。実際にPRとして十分機能するか不明な段階で、デザイン費用等に多額の経費を投入できないというのが実情であろう。

2 ゆるキャラの著作権の譲受けは単純ではない

このように、公募によってゆるキャラが生まれた場合、当然、ゆるキャラの著作権はその創作者に発生する。募集した側としては、今後、そのゆるキャラをできるだけ自由に扱うためには、著作権を創作者から譲渡してもらう必要がある。
ここで注意してほしいのが、著作権法による保護である。著作権の全部を譲り受けたい場合、契約書等で「一切の著作権を譲渡する」と定めるだけでは不十分なのである。著作権法には譲渡人を保護する規定があるため、契約書等にそのことを踏まえた記載がないと、著作権の一部(翻訳権、翻案権及び二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)が譲渡人に留保されることになる。このような事態を避けるためは、契約書等で「一切の著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む)を譲渡する」と規定しておく必要がある。

3 著作者人格権についての配慮

著作権法は、著作者が表現物を創作したという人格的な要素及び利益に着目して、創作と同時に、譲渡や相続のできない、まさに著作者だけに与えられる権利として、「著作者人格権」という権利を認めている(これに対して、譲渡できる著作権の部分を「著作者財産権)という)。その具体的内容は、公表権、氏名表示権などであるが、中でも特に厄介なのが、同一性保持権である。この著作者人格権について十分に考慮していなかったため起きたのが、「ひこにゃん」に関する著作権紛争である。
「ひこにゃん」は、平成19年の「彦根城築城400年祭」のイメージキャラクターとしてキャラクター作家がデザインしたものであった。彦根市などで構成される実行委員会は、原作者からひこにゃんの著作権を譲り受ける契約を結び、委員会は地元企業などに原則として無料でひこにゃんの使用許可を出していた。しかし、祭の終了後、ひこにゃんの権利は彦根市に譲渡され、人気上昇とともに、原作者のデザインにはないグッズが販売されるようになったことから、原作者が同一性保持権を同市に侵害されたとして、裁判上の紛争に発展したのであった。この紛争は、平成24年11月に和解によって終了した。
このように、著作者人格権をめぐって一旦紛争が起きれば、時間や労力がかかるのに加えて、せっかく人気の出たゆるキャラのイメージダウンにもつながりかねない。
では、どうすればいいのであろうか。
まず考えるのは、契約でなんとかできないかということである。しかし、著作者人格権は、当該人物についてのみ認められる権利であるから、原則として、譲渡はおろか放棄することもできないと考えられている。そこで、実際には、著作者人格権の不行使特約という形でリスクヘッジが行われている。人格権の不行使特約が有効かどうかについては未だに議論があるところであるが、同特約の有効性を認めている裁判例も存在しており(東京地裁平成13年7月2日判決。いわゆる「宇宙戦艦ヤマト事件」)、契約書にはしっかり記載すべきであろう。
もっとも、著作者人格権をないがしろにすることは、著作物の生みの親に対する非礼というほかなく、企業としては著作者に十分配慮することが必要である。このような不行使特約はもしものときの担保とすべきであり、実際には、ゆるキャラのデザインに何らかの変更を施すときには著作者の意見を聞くようにすべきであるし、第三者に著作権を使用させる場合にも、第三者に対して著作者の意向に十分配慮するよう求める必要があると思われる。

4 ゆるキャラの管理方法は?商標登録と利用規程の整備について

ゆるキャラの著作権を譲り受けた後、その管理は基本的に著作権者である企業が行っていくこととなる。ここで重要なのは、ゆるキャラを保護するための体制を作ることである。
まず、ゆるキャラの権利については、商標登録し、商標権を獲得することが重要である。著作権の場合、第三者がそのゆるキャラの存在を知らずに創作した場合は著作権侵害とされないのに対して、商標権の場合には、登録商標を知らなくても、その使用を止めさせ、または無断使用に対して損害賠償請求を行うことができる。そうすると、いわゆる類似のデザインを排除できるし、その商標権を第三者に使用させることもできる。ただ、商標登録は商品やサービスを指定して行うので、菓子類や広告等にゆるキャラを付けて指定することになる。
次に、利用制度の整備である。無償利用にせよ、有償利用にせよ、第三者の利用について十分に管理するためには、利用のための規程を整備する必要がある。不測の事態が起こったときに利用を中止させるための条項や損害賠償の条項、利用状況を利用者に報告させるための条項など、設定すべき項目は多数ある。ゆるキャラの目的にも合わせて、専門家と十分相談の上で作成することが望ましい。

以上のように、ゆるキャラといっても、そのイメージに反して、管理については知的財産権に関する知識を十分に有しておくことが肝要である。もちろん、本稿でゆるキャラの権利の管理について網羅できているわけではないので、実際にゆるキャラの創作に着手される場合には、公募の段階から専門家に相談することが望ましいであろう。

参考図 ゆるキャラの利用に関する関係図

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1. 企業文化を構築し、その特性や独自性を統一されたイメージやデザイン、分かりやすいメッセージなどで発信し、社会と共有することで、存在価値を高めていく企業戦略のこと

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