子に対するいじめへの法的対処【1/1】|スキルと市場価値UPに役立つ情報ポータルサイト「キャリア@PRO人(プロジン)」  

子に対するいじめへの法的対処【1/1】

2014年1月16日 19:14家庭を守る法的知識

子に対するいじめへの法的対処

文部科学省の調査によれば、平成24年度に全国の小中高校などが把握したいじめの件数は、過去最悪の19万8千件余りに及んだ。 この調査に先立つ平成23年10月、大津市の男子中学生がいじめを苦に自殺した事件は、事件前後の学校や教育委員会などの隠蔽工作が発覚したこともあって大々的に報道され、皆さんの記憶にも新しいことだと思う。
この事件から得られる教訓は、学校側に「穏便に」相談したところで碌に効果はなく、却って事態の隠蔽に走られることさえあり得る、ということである。
子どもがいじめを受けている事実が発覚した場合、学校側の問題解決能力を信用するのは賢明ではなく、子どもの生命・身体や尊厳を守るためには、子ども自身やその親が率先して実効的な対策を講じなければならない。
そこで、今回は、いじめに対して法の力でどのように対抗できるかを検討してみたい。


 

1 いじめについての証拠収集

法的手段をとる前提として、いじめの被害に関する証拠を集めておく必要がある。
いじめの現場やいじめ解消に向けた話し合いの場を録音・録画できれば強力な証拠になるが、それが無理なら、被害の日時・場所・内容と加害者の氏名をノートなどに書き留めておくだけでも良い。そして、ケガをさせられた場合にはその写真を撮影した上で病院に行き診断書をもらう、物を壊された場合にはその現物を保管しておく、ネット掲示板に誹謗中傷を書き込まれた場合には画面をプリントアウトしておくなど、被害の様子が客観的に明らかとなるような証拠を揃えておくことも大切である。なお、ネット上の書き込みに関しては、いわゆるプロバイダ責任制限法(「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」)に基づき、書き込みをした者の身元について情報開示請求ができることもあるので、匿名の掲示板だからといって泣き寝入りしてはならない。
また、学校や教育委員会に内容証明郵便でいじめの被害を申告して対処を求め、事態が改善しなければ法的措置をとることも辞さない旨を警告することも考えられる。これは、放置すればおおごとになるかもしれないという心理的効果を与えられるだけでなく、いじめへの対処を求めた事実及びその時期が公的に証明されるという意味で、「いじめには気づかなかった」という言い逃れを封じることのできる証拠となる。

2 いじめを刑事告訴

いじめの過程で行われる様々な行為は、個別に検討すればそれぞれが刑法上の犯罪を構成するものである。例えば、殴ったり蹴ったりすれば傷害罪が、それによりケガを負わせれば傷害罪が、持ち物を壊せば器物損壊罪が、ネット上に個人を特定できるような誹謗中傷を書き込めば名誉棄損罪あるいは侮辱罪が、カツアゲをすれば恐喝罪が成立する(ただし、加害者が14歳未満であれば責任能力が認められないため、刑法上の「犯罪」にはならず、厳密には「非行」という扱いになる)。
 したがって、通常の犯罪被害を受けた場合と同様に、警察に被害届や告訴状を提出することが可能である。大津いじめ自殺事件では、警察が被害届の受理を拒否したことも発覚して大きな問題となったが、もしこのように受理を拒まれた場合には、担当警察官の氏名と官職を確認するとともに、場合によっては、その警察官の所属する都道府県公安委員会へ苦情を申し立てるべきである。
 もっとも、いじめの加害者である児童・生徒は20歳未満であるから、少年法の適用を受け、必ずしも成人と同様の処罰を受けるわけではない。具体的には、特に何ら処分されない不処分、保護観察官や保護司から指導を受けながら生活する保護観察処分、少年院で矯正教育を行う少年院送致処分、比較的低年齢であれば児童自立支援施設送致処分などがあり得る。
成人と同様に処罰されることがないとはいえ、逮捕や取調べ、家庭裁判所の調査や審判などの手続が行われ、場合によっては少年鑑別所に一定期間身柄を拘束されることもあり得るので、加害者やその親に事の重大さを思い知らせる方法としては有効であると考えられる。

3 受けた損害について民事訴訟

加害者側に金銭を支払わせるという形で損害の填補をはかりたいのであれば、民事訴訟の提起が考えられる。この場合、加害者である子どもだけでなく、その親や学校などを相手に訴えを起こし、賠償を請求することも可能である。
もっとも、一口にいじめと言ってもその程度には様々なものがあるため、必ずしも全てのケースで損害賠償が認められるわけではない。
例えば、広島地裁平成19年5月24日判決においては、「中学生くらいの子どもの間においてなされる、からかい、言葉による脅し、嘲笑・悪口、仲間外れ等の有形力の行使を伴わない行為は、それ自体直ちに不法行為に当たるとはいえず、叩く・殴る・蹴るなどの暴行行為であっても、その態様や程度によっては必ずしも不法行為に当たるとはいえない場合もあり得る」「これらの行為を特定の生徒に対し長期にわたって執拗に繰り返して実行し、被害生徒に肉体的・精神的苦痛を与えた場合には、当該行為は、被害生徒の身体的自由、人格権を不法に侵害するものとして、不法行為に当たる」という判断が示されており、軽微ないじめでは損害賠償責任が生じない場合もあることを明言している。
したがって、いじめが上記のように悪質なものであり勝訴の見込みがあるかどうかについては、事前に法律相談などで弁護士に確認しておく必要があるだろう。
なお、既に2で述べた刑事告訴を行っている場合、その手続で作成された捜査記録や審判の記録などの文書は、加害者のプライバシーに深く関わる内容のものでない限りは原則として閲覧やコピーができるので、民事訴訟の証拠として有用である。

4 自己防衛のために

最後に、上記のような手段によってもなお加害者が態度を改めず、その親の抑止力も期待できない場合には、逆恨みによっていじめがエスカレートする可能性が高いため、速やかに転校の手続をとることをお薦めする。
いじめの加害者は理性を持たない猛獣と同じであるから、身を守るために逃げることは何ら恥ずべき行為ではなく、正当な自衛手段である。
子どもにとって最後に頼りになるのは親だけだということを十分にご理解いただき、いざというときには本稿を参考にしていただきたい。

参考:当事者間の関係図

当事者間の関係図

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