かつての自分は、もっとも人の上に立ってはいけない人間だった - ジャンプ株式会社 代表取締役 増渕知行氏【2/3】
2013年8月27日 18:00社長になる方法論
転機はマネージャー就任。自分にできることは人にもできるという思い上がりを知った

自分ができることとは違う
編集部:しかし、長く営業としてトップの成績を取っていれば、慕う方も多かったのでは?
増渕氏:「個人としては慕ってくれている人はいたかもしれませんが、当時の自分はマネジメントの立場としてはひどい人間だったと思っています」
編集部:では、早くマネージャーになりたいとは思われなかった?
増渕氏:「まったく思いませんでした。むしろ、それをずっと避けていて、できるならやりたくなかった。けれど、機会をいただいてやることになった後の自分は、本当にひどいマネージャーだったと思いますよ。実は今も、当時のメンバーには申し訳なく思っています」
編集部:それは、どんな部分だったんでしょうか。
増渕氏:「傲慢を承知でいうと、典型的な"できるひとはできる人を育てられない"というタイプでした。僕は才能で成果を上げてきたわけじゃない。努力を積み重ねた結果、成果を上げてきた。だから、お前(メンバー)にも同じような成果が出せるはずだろう?なぜ、できないんだって」
編集部:それでは結果は出なかった?
増渕氏:「メンバー育成という意味ではまったく。そして、そこで本当に多くのことを学びました。これまで、自分がプレイヤーとしてやってきた時には得られなかった学びをたくさんね」
編集部:非常に興味深いお話です。それは例えばどんなことですか?
増渕氏:「人は、自分で気がついた時にしか変わらない。ということ。それまで僕は、メンバーは自分の指導によって変えられるんだと思ってきた。プレイヤーとしての営業成果という意味では相手を変えてきた自負もあった。でも実際にやってみて、人を変えられるだなんてとんだ思いあがりでしたね。誰一人思い通りになることなんてなかったんです。そこに気がつけたことで、今の仕事と経営に活きる、ある大切なことを知りました。それは、"人に期待をしない"ということ」
編集部:受け取りようによっては、冷たくも聞こえてしまいますが......。
増渕氏:「この言葉には、自分の期待通りに人を動かそうと思うな。という意味があります。人間は、自分と未来は変えられるが他人と過去は変えられないんだと、マネジメント経験を通して学んだ。誰かに自分の期待通りに動いてほしいなんておこがましい。それこそ、自分基準にすぎない。人は自分基準では決して動かない。マネジメントって他人をコントロールすることではないんだ、と」